アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

クレイグ・ギレスピー、2017。トーニャ・ハーディングの半生を描いた映画なのだが、アメリカ女子初のトリプルアクセル成功とか、ナンシー・ケリガン襲撃事件にはそれほど興味を持っているようには見えない。それよりはフギュアがアメリカで担っているものと、トーニャ・ハーディングのギャップが際立っており、トーニャは底辺のヒーローとして映っている。その割にはトーニャは強くない。そもそもフィギュアスケーターとしての彼女はあまり描かれることはない。それでもこの映画がすこぶるおもしろいのは、トーニャにはどうしようもなく染み付いてしまったシミがあり、強烈なファイティングスピリットがそれを助長するからだろう。そこにジ・アメリカンな底辺活劇を見出すことができ、それをおもしろがれるからアメリカの底辺描写も腐っちゃいないんだと思わされた。この映画は底辺のアメリカ人が、なかなかサクセスしないサクセスストーリーであり、だからこそ見る者は惹きつけられる。事実もフィンクションもこの映画にはあってないようなもので、本人が出ているのかどうかの描写も大胆かつ不明瞭だ。ニコラス・カラカトサニスのカメラとトーニャを演じるマーゴット・ロビーのコンビネーションは素晴らしかった。あとは全体のテンポがよくて飽きることなく見られた。95点。