巴里の屋根の下

ルネ・クレール、1930。クレールのトーキー初作。見せない演出、聞かせない演出が随所に効果を発揮していて素晴らしい。トーキーなのに台詞をドア越しにして隠したり、音楽が遮ったり、汽車の音が遮る。見せない演出は決闘のシーンが良かった。そしてクレーン撮影で捉えられたバリの裏町の描写も素敵だ。美術のラザール・メールソンは本当にいい仕事をしたと思う。全編娯楽映画という感じで、悪いやつも拳銃も出てくるのだが、一貫してハートフルでユーモアの効いた人情劇になっている。ただ、それがうまくハマったかどうかは多少疑問が残った。演出からは、してやられた感がもっと欲しかったし、映画としても序盤でいいところを見せてしまっていて退屈な時間があった。初トーキーを見事に仕上げたというよりは、今見れば微笑ましく見てしまうくらい拙い部分もある。しかし、冒頭のシーンとか本当に雰囲気がよくて、あああんな世界に住みたいなあと思わされた。90点。