犬神家の一族

市川崑、1976。全然怖くないし、それによるサスペンスフルな緊張感もない。しかしそれを求めても仕方がない。この映画はATGなんかが持っていたアングラ臭とは対照的にからりと晴れた映画になっている。サスペンスや謎解きの緊張感がないまま、これだけ惹きつけるのだから市川崑の映像センスには恐れ入る。市川崑にとっては復活作に位置づけてもいい作品だと思うし、その後の大作へと流れる重要な転換点になったと思う。映像センスが素晴らしく見ていて飽きることがない。特に高速カット割に見られる絶妙なカメラポジションなどはとてもおもしろい。この映画は岩井俊二や庵野秀明が好きな映画としても知られているが、たしかにこの映画に見られる窮屈じゃない感じ、風通しのよい感じなんかは次世代に引き継がれていると思う。坂口良子が素敵だった。95点。