書道ガールズ!! -わたしたちの甲子園-

猪股隆一、2010。女子中高生部活メソッドの映画。そういう感じで行くのは分かっていたんだけど、とても驚いたのは、超テレビ的だったこと。そしたら映画の最後に「企画製作日本テレビ」みたいに出てきて、監督は日テレの社員か知らぬがドラマ演出家らしい。この映画はそんなテレビスタッフたちが映画を撮ろうとせず、一話完結の長編ドラマを撮ったのだと思う。僕はテレビ的な演出や撮影や照明が大嫌いだから見なきゃ良かった。ではなぜ見てしまったかというと、この作品が映画として公開されたから。劇場公開されても、題名が「書道ガールズ!!-日テレ The Movie-」とかであれば見ずに済んだ。テレビの演出家やスタッフが映画に挑戦するという例は当然のことながら沢山あるけど、ここまでテレビ然とした映画は初めて見たかも。バッキバキに証明当てるし、画を作るんじゃなくて、画を持たせるためにカットを割ったりジンワリズームをしたりする。僕はDVDで見たから結局テレビでクソ長いテレビドラマを見ただけなんだけど、これが映画館で垂れ流されたと思うとぞっとする。映画が映画館で封切られるからこそ描かれる、抑揚とか陰影とか起伏とか、うまく説明出来ないけど、そういったものがまるで無いままにスクリーンに投影されてしまった。この映画では衰退した街を扱っていたが、映画産業の衰退をひしひしと感じる作品だった。85点。

Blankey Jet City/VANISHING POINT

翁長裕、2013。ブランキーのラストツアーのドキュメンタリー映画。かなり腹が立つ映画。この監督は映画を知らないし、好きでもないんだろう。故に映画を冒涜してしまっている。まずなぜブランキーの面々が日本語でしゃべっていて、それをしっかりマイクで拾っているのに、オール日本語字幕なのか全くわからない。そして映画用語を知らないけど、監督の独白文章というかポエムみたいなのが大量に出てくる。そしてそのポエムがあらかじめ次のブランキーの演奏や状況を説明してしまっている。映像だけで説明出来ている部分でも説明を欠かさないから、常に説明過多。2重3重の説明は映画として本当に重罪だと思う。蛇足だがポエムがとても恥ずかしい。基本的にライブとライブ以外が順々に構成されているんだけど、ライブ以外はセリフの字幕とあらかじめあるポエムのせいで文字まみれ。そしてライブシーンは、いい感じだとか、暗雲漂うとか、全てあらかじめ説明されている。つまりライブシーンも文字で出来ている。更にはライブの音質が悪い。多分ライブハウスのラインの音がメインだと思う。最後の横浜アリーナみたいな豪勢な音で作るとか、1カメラを生かしてその場の音を録って臨場感を出すとか、そういうことをしないと見ているのがツラい。映像で物を語るというのがからっきしダメだった。映画は誰でも作れるだなんて、そんなのは幻想だということを改めて思い知らされた。85点。

ブエノスアイレス恋愛事情

グスタボ・タレット、2011。これはもうダダならぬ小品。人間と街と建築と通信と覆面と性と孤独の映画。淡々としていながらも軽快なリズムで映画は進行。不器用な街と不器用な人間の織りなすドラマは、本当に愛らしい。この映画に描かれる都市や生活には、個人的に共鳴する部分がかなりあった。都市生活者の孤独や、その中で出会う人間模様。それは自分の人生経験もあるけど、映画の体験として共鳴する部分が大きかった。僕はテレビで見たけれど、この映画はようやく劇場公開されるらしい。こういう映画こそ劇場で見るべきだし、この映画を見て劇場から出た後には、都市の風景が変わって見えるんじゃないかなあ。想像するにそれはとても素敵なことだと思った。それからYoutubeをチェックしたくなる。ラストシーンは本当に素敵だった。ピラール・ロペス・デ・アジャラ素晴らしかった。彼女の住んでる部屋が凄く良かった。あと犬を預かるイネス・エフロンは、キャストに厚みをもたらしていて、これまた素晴らしかった。邦題は相変わらずむごい。100点。

ラルジャン

ロベール・ブレッソン、1983。上映時間85分ということで、気軽に見てしまったのが間違いだった。映画はムチャクチャ面白いんだけど、冷酷すぎて寂しくなってしまった。この映画の構造は、よくある金は天下の回りもの的な部分と、それが赤の他人を巻き込んでいくこと、ファミリー・アフェアーでないことが鍵だと思う。そもそもファミリー・アフェアーとしてこの映画が語られるなら、最初のシーンの親子の金の関係で映画が終わってしまう。そして他人を象徴するメタファーか知らないけれど、数々の扉。この映画は扉を使ったカットが物凄く多い。そしてシーンの繋ぎの情のないことこの上なさ。人間の情の時間はいらないけど、扉の締まる時間はいるような感じ。こういう小津やブレッソンに共通した人間をモノというかモデルとして扱う映画は、見ていて気持ちがいい。音の使い方とか気をつけて見ると素晴らしいことをやっている。特に最後の老人と娘の家のくだりは、映画の美しさに満ち溢れた、崇高なものだったと思うなあ。100点。

ザ・コーヴ

ルイ・シホヨス、2009。この映画から思い出されるのは『靖国』っていう映画。中国人が撮って、右翼とかの上映妨害があった。そしてこの映画もアメリカ人が撮ったドキュメンタリー。和歌山県太地町のイルカ漁をシーシェパード絡みの制作陣によって作られた作品。『靖国』は警察の厳戒態勢の中見に行ったけど、映画がつまらなかったからお話にならない。でもこっちのコーヴは脚本家がいい。ラストの見せ場、盗撮大作戦はやはりスリリングだった。あの入り江の中だけでしか見ることの出来ない行為は、女性のスカートの中を見てしまったような、まさしく盗撮が似合う危うさがあった。この映画は大地町の住民の顔にぼかしが入っている。これは大地町の国内上映するんなら、ぼかし入れてもらって、あと水銀の量の注釈もお願いねってことらしい。それで配給元・アンプラグドが、上映できないよりは妥協して上映を。というこでぼかしが入ったらしい。僕はぼかしは大嫌いで、大反対で、アンプラグドの愚行だと思う。僕は映画の何を見ているのか。その中で、人の顔というのは大きなウェイトを占めている。顔にぼかしを入れて良いのは、誰も興味の無い素人AV男優くらいなものだと思っている。だからアンプラグドは致命的なミスをしたと思う。しかし最後のイルカ大虐殺シーンは、何故殺すのかという疑問が大いに残る。調査捕鯨か何かで殺しているとか、生態系の問題で殺しているとか、そんな問題があったと思うけれど、そういうところを徹底的に取材しないのが、さすが環境保護団体が作った映画という感じはする。でも環境保護団体色が非常に強いのに、このエンターテインメント活劇はなんなんだろう不思議な映画だ。

コンテイジョン

スティーヴン・ソダーバーグ、2011。これは大がかりなパニックサスペンスだと思っていたら、思いっきり肩すかしを食らった。世界規模で拡大するウィルスを巡るお話。普通は各国の新聞やテレビが報道で煽ったりとかしそうなものだが、かなり淡々とドラマが展開される。この映画はジャンルはサスペンスではなくドラマ。群像劇になっているんだけど、淡々とし過ぎて物足りなさがある。ジェニファー・イーリーのくだりなんかは凄く良かったけど、もっと描けた感じがするし、アルファ・ブロガー、ジュード・ロウは街を歩くのがカッコイイだけで、ネットの力とかは全然描いていない。そう考えるとこの映画はソダーバーグの偏執的な映画ではなく、スタイリッシュではあるが大衆映画だという印象。映画のイントロは暗転の中グウィネス・パルトローの咳き込む音から始まる。だからこの映画の終了辺りで咳払いをする客というのが映画を閉める役割を果たすんだけど、ホームシアターではそれは体験できない。正しい劇場型映画だという印象。演者としては主演と言っても主演らしくないマリオン・コティヤールが素敵だった。マリオン・コティヤールは都市部から農村にいて、それぞれに魅力があった。グウィネス・パルトロウは一番おいしいところで出ていて可笑しかった。

ザ・ファイター

デヴィッド・O・ラッセル、2010。ボクシングファンにはアルツロ・ガッティとの3度に渡るノンタイトル10回戦でおなじみのミッキー・ウォードの実話に基づく物語。アカデミー賞で助演男優賞と女優賞をダブルで獲った2人、クリスチャン・ベイルとメリッサ・レオの強烈なキャラクターが凄い。特にメリッサ・レオは時代性と地域性と民族性とその他諸々ビックリした。クリスチャン・ベイルは演技にうるさそうな顔をしていて、あまり好きではない。でもこの映画の主人公は現代サッカーにおけるゼロトップシステムみたいなもので、マーク・ウォールバーグをトップに据えたゼロトップ映画。だからこそクリスチャン・ベイルはこの映画で生き生きとしている。特に起承転結で言えば「起」の部分。エイミー・アダムスとマーク・ウォールバーグがプライベートで会う手前まで。この映画はこの部分がとてもテンポが良くぞくぞくするような導入をしてくれるんだけど、その後フツーのテンポになってガッカリするんだけど、この部分はクリスチャン・ベイルが主役で、マイケル・バッファーのリングアナウンスは聞こえるわ、レナード出てくるわ、テレビ局付いてるわでとても騒々しくて華々しい。僕はどうも「起」の部分と他とのバランスの悪さが際立っていて残念だったなあ。その後の「承転結」にも素晴らしいシーンは数あれど、特筆すべきは特になし。エイミー・アダムスのキャラクターが良かったのと全編を通じてメリッサ・レオが女王蜂のように存在していたことくらいかなあ。最後にミッキー・ウォードが世界チャンピオンになるんだけど、これ団体がWBU。世界的に見てもいわゆるマイナー団体。ボクシング・ファンとしてはミッキー・ウォードは世界チャンピオンではないと思う。アルツロ・ガッティと、どつきあい3連戦したボクサーなんだよなあ。

 

HBO Boxing: Fights of the Decade – Ward vs. Gatti I (HBO)